<本コラムは転載禁止です>
前回の記事の続き、今回は仙骨のお話です。
骨盤という骨の集合体は、腸骨・坐骨・恥骨・仙骨・尾骨が集まってできています。
つまり、大きく骨盤といいますが実際に骨の名前は細かく分かれています。
画像の赤い部分が仙骨でその下に小さくくっついているのが尾骨。
尾骨は遠い過去、人間に尾っぽがあった名残と言われており
今では何も機能していない骨と言われています。
通常はお尻の内側に巻き込まれており、通常感じることはない骨です。
そして仙骨ですが、左右の寛骨という黄色い大きな骨盤のメインともいえる骨の集合とくっついています。
※寛骨は腸骨・坐骨・恥骨の集合体
そして、仙骨の上からは腰椎がつながりその上に背骨が連なります。
さて前述したコラムでは骨盤は歪まないしズレないとお話ししましたが、
これら細かい骨の集合体であるからこそ骨同士が強力な靭帯で巻きつかれており、
骨盤やそれらの骨たちはちょっとやそっとじゃズレたり歪んだりしません。
これが骨盤が動かない理由です。
骨がバラバラになり歩けなくならないよう、
臓器をきちんと守るために骨以外の外からもがっちりと守っています。
ただ、こうした前提条件があるにもかかわらず
なぜか巷では仙骨がずれると言われています。
仙骨もズレない!
ある理学療法士兼整体師の方に、
骨盤は歪まないしズレませんよねと物申したことがあります。
その際の返事ですが
「仙骨がずれるっていうのが正しいよね」と言われました。
絶句です。
前提条件に靭帯でグルグルに巻かれた状態の骨盤が、
仙骨だけ簡単に動くわけもないのです。
そしてこの方に限らず、整体師や書店の本などでも
「骨盤がずれるのではなく仙骨がずれている」と表現されています。
もう一度言いますが、骨盤はずれません。
骨盤は骨の集合体です。
仙骨はその一部です。
そのため、仙骨もズレたり動いたりしません。
この方たちの言い分を聞いてみると下記のようです。
仙骨と腸骨の間には仙腸関節という関節があります。
(骨と骨の間には関節があり、仙骨と腸骨の間の関節だから仙腸関節といいます)
この関節のところに隙間があり、そこがずれていくらしいのです。
言いたいことはなんとなく分かりますが、
骨と骨の間に関節があるのは当たり前で、
関節と骨がぎちぎちにくっついているわけではなく
もともと隙間があってこそスムーズに骨が動くわけです。
(関節の仕組みや組織名もこまかく書くといろいろありますが、ここでは省きます)
関節は動く余裕があるのが当然のため、
そもそもここがずれると表現するのはおかしいわけです。
たしかに骨盤はその形から不変であり、
腕のように骨と骨がそれぞれスムーズに動くわけではありません。
そのため関節に余裕があるのはおかしいと思うかもしれませんが
この余裕・隙間は髪の毛1本にも満たないものすごく細い隙間なのです。
イメージしてください。
動いたりズレたりするような隙間はどれくらいの隙間を想像しますか?
5ミリ?1センチ?
わたしならそれくらい想像します。
でも、髪の毛1本以下は1ミリにも満たないものすごーーーーく細い隙間です。
その細さが目に見えるかというとそれすら怪しい細さです。
これをズレるという表現にするのはおかしくありませんか?
わずかな余裕は骨と骨がぶつからない程度の限りなく最小限なものであり
仮に仙腸関節が動いたとしてもそれは車のブレーキの遊びのような機能。
人体に影響するものではありません。
よって、「骨盤がずれる=仙骨がずれる」という表現も誤りなのです。
お分かりのように骨盤矯正というものは存在しません。
知識のない整体師による施述を受けるよりも
自分で運動し鍛えることで改善できるレベルの話であり、
整体による一瞬の「治ったかもしれない」という不確かな感覚よりも
しっかりと日頃からの運動によるメンテナンスが必要だということです。
次回は産後矯正についてお話しします。